宮崎駿監督の一番の大ヒット作である「千と千尋の神隠し」は日本国内はもちろんのところアメリカでアカデミー賞を、ベルリン映画祭では金熊賞を受賞しています。
「千と千尋の神隠し」の豆知識をまとめたいと思います。
「千と千尋の神隠し」企画原点
児童文学の「霧のむこうのふしぎな町」に宮崎駿監督はインスピレーションを受けています。
「煙突描きのリン」からの変更
「千と千尋の神隠し」の前に宮崎監督は「煙突描きのリン」を構想していました。
しかし、「踊る大捜査線 THE MOVIE」を観た鈴木敏夫さんが宮崎監督に感想を言ったところ企画を変更しました。
「いつも何度でも」は「煙突描きのリン」の主題歌だった
「千と千尋の神隠し」の主題歌である「いつも何度でも」は元々「煙突描きのリン」の主題歌でした。
「煙突描きのリン」のために木村弓さんは「いつも何度でも」を作曲しましたが、その後「煙突描きのリン」が流れてしまうことになり、後に作られた「千と千尋の神隠し」で主題歌として使われることになった。
このことに関して宮崎監督以下の様に語っています。
「この歌がきっかけでこの作品を作ったのかもしれない」
油屋の設定
油屋のモチーフとモデルを紹介します。
油屋のモチーフは風俗店
宮崎駿監督がインタビューにて風俗店であることを匂わせた発言をしています。
「現代社会を風刺的に描くため、あえて風俗店のような湯屋を舞台にした」
コミュニケーションが苦手な主人公の千尋が油屋にてキャバクラ嬢や風俗嬢となり、色々な人と接することで成長することに着想を得て作られています。
ちなみに、湯屋に大浴場ないことに関して宮崎監督は以下の様に発言しています。
「そりゃあ、色々いかがわしいことをするからでしょうね(笑)」
・出勤ボードにはユニークな名前がある。
リンさんと千さんが札をひっくり返していく出勤ボードには「コイ」「ふな」「トロ」等の魚の名前があったり、「馬」「へそ」などの名前がたくさんあります。
「千」は源氏名
千尋が油屋で働く契約を結んだ後に、千尋の本名が奪われ、「千」として生きるシーンがありますが、この時に「千」と本名以外の名前がつけられているのは、いわゆる源氏名にになります。
油屋のモデル
油屋(あぶらや)の場所には明確なモデルはないですが、複数の場所が参考にされています。
有名な場所は以下の通り。
インタビューにて宮崎監督は以下のように語っています。
台湾の九份(きゅうふん)はモデルではない
出典:https://www.veltra.com/jp/asia/taiwan/ctg/1438:Jiufen/
台湾の九份は油屋と雰囲気等が似ていることから「千と千尋の神隠し」のモデル地とされる情報が広まっているが、この点に関して宮崎監督は台湾の記者に向けたインタビューにて明確に違うと言っています。
神様入浴は「霜月祭」がモデル
神様が入浴する姿は「霜月祭」を参考にしています。
「ロマンアルバム」の中で、宮崎監督が以下の様に語っています。
電車を登場させた理由
千尋が電車に乗るシーンは、「銀河鉄道の夜」をイメージして作られています。
ただし、こういったイメージを「千と千尋の神隠し」へ採用しようとしたけれども、どうやっても入れることができず、断念した様です。
キャラクターについて
登場するキャラクターについて紹介します。
千尋のモデル
千尋のモデルはプロデューサーの娘で、名前は「ちあき」です。
千尋の髪留めが光る理由
千尋 が不思議な世界にいたことの証拠は千尋の「髪留め」のみになりました。この髪留めですが、宮崎駿監督によると「あの世界は全部夢だったというふうにしたくなかった」と語っており、そのために残したのがこの髪留めだったのだと明らかにしています。
トンネルを振り返る千尋の眼差しに応えるように輝く髪留め…最高ですね。
千尋の成長物語ではない
異世界に迷い込んだ千尋がそこで出会った人たちや仕事を通じて人間的に成長する物語に見えますが、宮崎駿監督にはそのような意図はないようです。
千尋の父親のモデル
父観のモデルは奥田誠治プロデューサーです。
荒い運転と食事シーンがそっくりらしいです。
ちなみに、千尋の父親が運転している車は宮崎駿が普段仕事で使用している「アウディA4 クワトロ」です。
「アウディジャパン」協力の元、福島県いわき市にあるアルパインのテストコースで実際に広報車を貸し出してドアの開閉音やエンジン音を録音した様です。
湯婆婆と銭婆が双子の理由
当初、銭婆のデザインは背の高いスレンダーな婆を予定していました。
しかし、物語の後半に新キャラを登場させる上で、説明するための時間や物語が煩雑になる等から湯婆婆と双子で同じ姿になりました。
カオナシの正体
カオナシは宮崎駿監督が「現代の若者をイメージ」して作画しており、自我のない存在であり、誰かとくっつきたいけど自分がない人をイメージしています。
カオナシはモブキャラだった
カオナシは当初、千尋が橋を渡る場面にて何気なく描いたお面をかぶった脇役的な初期設定でした。
その後、宮崎監督が「彼は何をしているのか?」と考え始め、徐々に重要なキャラクターになりました。
米林宏昌監督説はあとづけ
このカオナシですが、米林監督と顔が似ていることから、米林監督がモデルではないかと噂されていました。
このことに関して米林監督はインタビューで以下の様に語っています。
ハクについて
ハクの本名「ニギハヤミコハクヌシ」は、「饒速日命(にぎはやひのみこと)」が由来となっています。
また、ハクの動きはウナギを参考にしており、竜になったハクの動きはスタッフがかなり苦労したポイントだった様です。
そのことは絵コンテに記載されておりハクがニガダンゴを飲んで暴れ苦しむ動作は、「まな板に留められたうなぎ」と表現しています。
オクサレさまの着想
人間が河に投げ捨てた自転車・ルアー等の大量のゴミによってオクサレさまはひどい姿になってしまいました。
このキャラクターは、宮崎監督が川掃除に参加した時に、自転車を引っ張り上げた体験から着想を得たようです。
神木隆之介・大泉洋さんさんが声優として参加している!
駄々っ子な坊さんの声を演じたのは当時8歳だった神木隆之介さんです。
また、この番台の声を演じたのは大泉洋さんです。なみにこの番台蛙には「声の良さで番台に座ることを許された」という設定があります。
釜爺
釜爺の声を演じたのは菅原文太さんです。鈴木敏夫プロデューサーの推薦により決まったようで、「愛というセリフをいやみなく言える人はこの人しかいない」とのことです。
カエル男・ナメクジ女について
油屋の従業員たちの多くは男性がカエルで女性はナメクジをモデルにして描かれています。このことについて宮崎駿監督は「僕らの日常ってカエルやナメクジみたいなもんじゃないかと思っているんです。」とのことです。
マックロクロスケが登場している
千尋の靴を運んでいる小さな黒い生きものたちは、「となりのトトロ」でメイとサツキが「マックロクロスケ」と呼んでいた不思議な生き物と同じ仲間です。カンタのおばあちゃんは「ススワタリ」と呼んでいましたね。
「となりのトトロ」で登場した「ススワタリ」との違いとしては、「千と千尋の神隠し」では手足が生えた形で登場しています。
魔女の契約印について
作中でハクが湯婆婆の命令で銭婆から「魔女の契約印」を盗むシーンがありました。
魔女の契約印が必要な理由
絵コンテによると、湯婆婆が魔女の契約印を必要とした理由は、湯屋の従業員との労働契約を変更する為に必要だからの様です。
湯屋の従業員は湯屋で働く際に千尋の時と同じように名前を書いて労働契約を結びます。
ここで本当の名前を書いて、その名前を奪われてしまうと、自分が何者であったか、自分の帰るべき場所は何処かが分からなくなるため、大抵の従業員は、契約時に「偽名」で契約を結んでいます。
そのため、湯婆婆は自分が望む様な都合の良い「労働契約」が結べません。
ハクがが盗んだ「魔女の契約印」があるとその労働協定を変える事が出来、湯婆婆の望む「労働関係」に書き換えることができます。
ハクが湯婆婆の言いなりになった理由
多くの従業員が湯婆婆との契約時に「偽名」で契約を結んでいますが、ハクは正直に名前を書いたため、自分の名前を忘れ、湯婆婆の言いなりになりました。
「龍は優しくて、愚か」であったハクは契約時に正直に名前を書いたのですね。
しかし、名前を奪われ湯婆婆に支配されたハクでしたが、元神様だけあったことから、印鑑を盗むよう命令されしかたなく銭婆から盗み出しまし田ものの湯婆婆に印鑑を渡す事はしなかった様です。
千尋の父親が食べた物
千尋の父親が食べたブヨブヨした食べ物を食べたことで、ブタになるシーンがあります。
その時に食べたブヨブヨした食べ物はシーラカンスの胃袋であることが米林宏昌さんのTwitterにて明かされています。
お父さんが食べてるブヨブヨした食べ物はシーラカンスの胃袋と絵コンテに書いてありました。
ハクはシュッと動いてピタッと止まるので原画が少なくて楽チン。千尋はビクビクしてるので原画が多くて大変。— 米林宏昌 (@MaroYonebayashi) September 19, 2020
豚になった理由
千尋たち親子がトンネルを潜り迷い込んだ場所は八百万の神々が住む世界で、本来人間が来てはならない場所でした。
そして、そこで、千尋の両親は、神々に出す食べ物を勝手に食べたことで罰として豚にされてしまいました。
豚の中に両親がいないことが分かった理由
豚になった両親を人間に戻すために湯婆婆は、千尋に試練を課します。
その内容は「油屋の前に集めた豚の中から両親を言い当てなさい。」でした。
しかし、千尋は迷うことなく「この中に両親はいない。」と即答しました。
なぜ両親が豚の中にいないことが分かったかに関して宮崎監督は以下の様に語っています。
「10歳の女の子が数々の危機をくぐり抜けて、「生きる力」を獲得したら、みんな自然とそれができるはず」というのが宮崎監督の答えです。
参考にした資料紹介