宮崎駿監督が構想に16年、制作に3年をかけて1997年に上映した「もののけ姫」についての豆知識をまとめたいと思います。
目次
映画に関して
・当時の歴代興行収入記録達成
「もののけ姫」は興行収入193億円を記録し、当時「E.T.」が保持していた日本の歴代興行収入記録を塗り替えました。
・作画枚数:14万枚以上
「もののけ姫」以前の宮崎駿監督の長編アニメは、5万から7万枚ほどの作画枚数で製作されてきましたが、「もののけ姫」では14万枚以上もの枚数が使用されています
「ジブリを使いつぶす」ほどの覚悟で宮崎駿監督は桁外れの労力と物量を投入したようです。
これにより、それ以降「千と千尋の神隠し」:約11.2万枚、「ハウルの動く城」:約14.8万枚とスタジオジブリの制作体制そのものを刷新する結果となりました。
デジタル体制への移行(CG技術採用)
スタジオジブリ最後のセル画と絵の具を使った作品であり、本格的にCGが採用された作品です。
ディダラボッチが登場するシーンや動く触手には3DCGのパーティクルによる流体シミュレーション機能を応用して制作されています。また、ラストの植物が芽吹き再生していくシーンでも3DCGによる制作されています。
ちなみに、ディダラボッチは日本各地で伝承される巨人で、浜名湖などの多くの湖がディダラボッチの手や足の跡だとする伝説やディダラボッチが富士山を甲州一帯から土を持ってきて作った山だという説話があります。
キャッチコピー「生きろ。」
もののけ姫のキャッチコピー「生きろ。」はコピーライターの糸井重里さんが書いたものです。
何度もFAXのやりとりがされ、苦難と迷走の末にやっとたどりついたものが「生きろ。」というコピーです。
その他にもキャッチコピーの候補が22本あったようです。
主題歌
もののけ姫の主題歌はカウンターテナー歌手である米良美一さんが歌いました。
この主題歌は「アシタカのサンへの気持ち」を歌っているものであり、アシタカの心の中の声をイメージして宮崎駿監督自身が書き下ろしたようです。
ちなみに宮崎監督は「1番しか書けない」といったことから、この主題歌には2番の歌詞がありません。
登場キャラクターについて
サン
サンはずっと山犬になることを願い、人間は醜いと考え、人間である自分のことも醜いと思っています。
モロとサンの関係について宮崎駿監督は以下のように語っています。
「多分モロのことだからあけすけにお前は醜いと言ってると思うんですね。そういうお母さんですから」
アシタカに食べさせている物
サンがアシタカに食べさせているのは干し肉です。
傷ついたアシタカでは固い干し肉は噛みきれないので、サンが口でやわらかくして与えています。
エボシ
エボシの設定についての宮崎駿監督のメモには以下の記述があります。
「海外に売られ、倭寇の頭目の妻となり、頭角を現し、ついに頭目を殺し、その金品を持って自分の故郷に戻ってきた」
・エボシは死ぬ可能性があった
エボシはモロによって腕をもぎとられました。しかし、実はこのシーンで鈴木プロデューサーは、エボシは死んだほうがよいのではと提言していたようです。
しかしエボシに愛着があった宮崎駿監督は、長い議論の末に「やっぱり殺せないよ、エボシは」という結論に至ったようです。
エボシは現代人
宮崎駿監督は、原画の遠藤正明氏の打ち合わせの時に「(エボシは)現代人ですから。魂の救済を求めていない」と語っています。
・監督から声優へのリクエスト
エボシの声優は田中裕子さんです。宮崎駿監督から、エボシを演じるにあたり「宝塚風にならないように」というリクエストがあったそうです。
また、この方は「ゲド戦記」のクモ役も担当しました。
男女の力関係について
制作発表記者会見の中で宮崎駿監督は男女の力関係について次のように語りました。
「男と女の力関係のようなものは、江戸時代に作られた関係がいつの時代でも同じだと思い込んでいるところがあるんですけれども、室町時代の女たちはもっと自由でかっこいいですよ」
モロと乙事主は良い仲だった
乙事主とモロは旧知の間柄で、100年ほど前まで良い仲だったという裏設定があります。
モロを演じている美輪明宏さんがアフレコをしている時に、宮崎駿監督はモロの声に女を匂わせるために、「モロと乙事主は、かつていい仲になったことがある。しかし、100年前に別れている」と指示を出してます。
乙事主は500歳、モロは300歳という設定ですので、200歳の歳の差ですね。
コダマは後のトトロ
宮崎駿監督によると、小さなコダマが後のトトロになるのだという考えがあったそうです。
トトロは何千年も生きているというのに、この森にトトロがいないことを気にしていた監督はある日「それ(最後のコダマ)がトトロに変化したって。耳が生えたっていうの、どうですかね」と話したようです。
シシ神
宮崎監督がシシ神様のイメージを伝えるために書いた詩の中には「森が生まれた時の記憶とおさな子の心を持つ」という文があります。
シシ神の森のモデル
1995年5月に、スタジオジブリのメインスタッフは屋久島・白谷雲水峡にロケハンに出かけています。
「もののけ姫」の具体的なシーンを想定してロケハンしたわけではなく、人の入らない太古の森を自分の目で見て、肌で感じることで、「もののけ姫」の映画作りに大きな影響を及ぼすことが狙いであったようです。
ヤックル
パンフレットによると「今日では絶滅した、アカシシと呼ばれるオオカモシカ」と説明されています。
また、宮崎駿監督によると「ヤックルは実在しない生き物を描くほうが楽だという思いが自分の中のどこかにあったので、作りました」とのことです。
参考資料