今回は、2004年11月20日に公開されたスタジオジブリ作品「ハウルの動く城」の豆知識を紹介したいと思います。
目次
物語について
原作について
「ハウルの動く城」原作は、イギリスの作家、ダイアナ・ウィン・ジョーンズさんが1986年に発表した「魔法使いハウルと火の悪魔」です。
「ハウルの動く城」のシリーズは全3作あり、ジョーンズさんはジブリ作品と宮崎駿監督のファンだったそうです。
・原作者の注文
「ハウルの動く城」の物語前半は比較的原作を忠実に再現していますが、後半は原作には無かった戦争が付け加えられるなど全く違った展開になっています。
原作者であるジョーンズさんは「ハウルの性格を変えないように」とだけ注文をつけおり、映画については「とても素晴らしかった」「宮崎は私が執筆したときと同じ精神で映画を作った」と語っています。
・ヒロインが主題歌を兼任
「ハウルの動く城」のラストで流れる作品の主題歌「世界の約束」を歌っているのはヒロインであるソフィー役の倍賞千恵子さんです。
ヒロイン役の声優が主題歌を歌っている作品は「紅の豚」以来です。ちなみに「紅の豚」のヒロインの1人であるジーナ役を担当した加藤登紀子さんが歌唱を兼任しています。
また、詩人の谷川俊太郎さんが作詞を担当して、作曲は「千と千尋の神隠し」の主題歌「いつも何度でも」を作曲し歌った木村弓さんです。
ちなみに、スタジオジブリの宮崎駿監督の長編映画の中で、他に原作者がいる作品は「魔女の宅急便」以来、15年振りでした。
込められたメッセージ
宮崎駿監督はインタビューにて「ハウルの動く城」について「この物語が素晴らしいのは、呪いが解けて主人公が若返るというハッピーエンドではない点だ。大切なのは彼女が年を忘れること」と語っています。
また、「もし若さだけに人間の価値があるとしたら歳をとったら意味がないのか?」をテーマにしているようです。
理由のひとつとしては、スタジオジブリで働くベテランスタッフの存在があり、人生の岐路で引退する方も現役で続けている方も、すべての方の協力なくしてアニメーション映画はつくれないという思いがあったからのようです。
ソフィーについて
魔法が使える?
原作では「ソフィーはモノに命を吹き込む魔法使い」として描かれています。
映画の中では、その魔法が使用できる描写を読み解くことはできますが、説明は省略されています。
これに関して宮崎駿監督はイタンビュー以下のように述べています。
「説明するための映画は作らないと決めた以上、俺は説明しない!っていうことでやったら、やっぱり半分ぐらいの人はわからないみたいなんですよね。これはきわめて不愉快な現実でしたね。」
意図して魔法が使えることの説明を省いている事がわかります。
詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
老婆から少女へ戻る理由
老婆の姿になっているソフィーは、呪いの解き方は分からないはずなのに、サリマンの前で凛とした少女の姿に戻ります。
このことに関して、制作の過程で宮崎駿監督が鈴木プロデューサーに語っています。
詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
ソフィーがヒロインになる瞬間
ソフィーのおさげが切り落とされてカルシファーが食べるシーンがあります。絵コンテを見るとこのシーンで「ヒロインようやく登場!!」と書き込みがあります。つまり、おさげが切り落とされた瞬間にソフィーは見た目だけではなく気持ちの面でも本当のヒロインになったのです。
初めてのキスシーンだった
戦い、傷ついたハウルにソフィーはそっと口づけます。
宮崎監督によると、アニメーション映画において、実はこれが初めての純粋なキスシーンとのことです。
ハウルについて
ハウルが城を動かす理由
ハウルは映画・原作共に色男として描かれており、数多くの女性を口説き落とす「浮気性」の性格から多くの女性から恨みを買ってしまいます。
このため、ハウルは「ハウルが手を出した女性たちから逃げるため」に城を動かして逃げています。
魔女よけの呪いはフィギュア集め感覚
ハウルは「僕は本当は臆病者なんだ。このガラクタは、全部魔女除けのまじないなんだよ。怖くて怖くてたまらない…」というシーンがあります。
作画監督の高坂さんによると、このハウルの部屋にある魔女よけのまじないグッズは「今の若い人たちがフィギュアを集めるのと同じ感覚」で集めているようです。
ネバネバはセロリのソース
絵コンテによるとハウルが全てを拒絶するように体から放出していた緑色のネバネバしたものは「セロリのソース」のようです。
木村拓哉さんからハウルがわかった
ハウルの声優である木村拓哉さんがアフレコでハウルを演じたのを聞いた宮崎駿監督は「ハウルってこういう人だったんだ」と改めて認識したようです。
ハウルのイメージ
宮崎駿監督はハウルについて以下のように語っています。
「天才的な魔法使いだけど、近年ありがちな、心に何かを抱え込んで大人になりきれない青年」
荒地の魔女について
・階段を登るシーンは変更されていた
荒地の魔女とソフィーが王宮の長い階段を上るシーンでは、当初ソフィーが先に上り、立ち止まって荒地の魔女に手を差し伸べる予定だったようです。
その後、このシーンを大塚伸治さんが担当することになり、「大塚さんがやってくれるなら、そんな説明的な芝居はいらない」と内容については任せたようです。その結果、競い合いながら2人が必死に階段を上るシーンになりました。
荒地の魔女がハウルの童貞を奪ったというストーリーがある
「三鷹の森ジブリ美術館」で上映されている短編アニメーション「星をかった日」は「ハウルの動く城」のサイドストーリーとして、ハウルの少年時代を描いた物語という裏設定があります。
そして、2012年にニコ生で放送された「押井守ブロマガ開始記念! 世界の半分を怒らせる生放送」で鈴木敏夫さんと押井守さんが対談していますが、その対談の中で、ハウルの童貞を奪った相手が荒地の魔女と発言されています。
古女房の介護
荒地の魔女がソフィーに「恋だね。あんたさっきからため息ばっかりついてるよ」というシーン。
このシーンについて鈴木プロデューサーは「いいシーンなんですけど、よく考えてみると無茶苦茶な話ですよね。新しい恋人に古女房の介護をさせるわけでしょう」と語っています。
城について
動作音が静かな理由
なかなかに動作音がうるさそうなハウルの動く城ですが、実際の音は静かです。これが宮崎駿監督が「これは張りぼての城だ。大砲をぶっ放したりもしない、見かけ倒しのガラクタなんだ」「魔法で動いているんだから、軽い音にして」とリクエストしたためです。
またこの巨大な張りぼて城の動作音を「軽い音」にするために、効果音チームはスタジオに木製のやぐらを建てて木材のきしみを録音したそうです。
扉が通じている先
ハウルの動く城の扉がつながっている先は以下の通りです。
青:港町、赤:キングスベリー、緑:城がある荒地です。
そして、黒はハウルだけが知っているとのことです。