今回は1989年に上映された「真序の宅急便」に関する豆知識を紹介します。
目次
キキが黒服を着る理由
修行に行くキキは真っ黒な魔女の服を着ることが気に入りませんでした。
この黒服を着る理由に関して宮崎駿監督は次のように語っています。
「あの魔女の黒い服は、むかしからのいい伝えどおりそうなっているからだけじゃないんです。黒い服は、もっともそまつな服を着ているという意味だと思うんです。いちばんそまつな服を着て、着かざったりしないで、ありのままの自分の姿で、自分の世界を見つけに行く。それが魔女の修業なんだということだと思う。」
声優に関して
魔女の宅急便と名探偵コナンの声優
主人公 キキ の声を演じたのは江戸川コナンの声優でもある高山みなみさんで、トンボ の声を演じたのは、工藤新一(怪盗キッド)の声優でもある山口勝平 さんです。
キキとウルスラは同じ声優
キキの声を演じた高山みなみさんは絵描きのウルスラ の声も担当しています。
この作品には女性のキャラクターは、根本的には1人の人物が成長したものというイメージでそれぞれが“各年代を代表する女性”として描かれています。このことから、高山みなみさんの一人二役という発想も生まれたそうです。つまり、キキ(13歳)が成長するとウルスラ(18歳)になり、おソノさん(26歳)、キキのお母さんのコキリ(37歳)、最後はニシンのパイの老婦人(70歳)へと成長していくということです。
トンボはモテる少年
トンボ のイメージは、当時は今一番女の子にモテる少年をベースに、頭がいい・明るい・ちょっと不良がかっている…といった条件を念頭に設定されたそうです。
パンフレットのトンボの紹介では「キキの恋の対象にはまだなりえないが、良い友人にはなりそうなタイプ」です。
登場する食べ物
つつみ焼き
ジブリ作品にでてくる食べ物の中でも人気なのが魔女の宅急便に登場する「ニシンとカボチャのつつみ焼き」です。魚ニシンはモデルになった北ヨーロッパ地方でもよく食べられている魚のようです。
キキが飲むおかゆはスウェーデンの「ポリッジ」
おソノさんが キキのために作った白い飲み物のような食べ物はミルク粥です。物語の舞台のひとつとされるスウェーデンに伝わる「ポリッジ」というミルクのお粥です。
物語の中
旅立ちのシーンで鈴が鳴る理由
キキが修行のため飛び立つシーンで、木につけられた鈴がなるのは、原作者である角野栄子さんが「キキが飛び立つときに鐘を鳴らしてほしい」という要望を取り入れたとされています。
劇中に隠れジブリが複数する。
・トトロのぬいぐるみ
キキが魔女の修行をするために魔女の衣装に着替え終えた後、キキのお父さん(オキノさん)が部屋に入り、おもむろにキキのベットに座るシーンにトトロのぬいぐるみがあります。
・バスに「GHIBLI(ジブリ)」の文字
魔女の修行のために新たな街を探して旅立ったキキと相棒の黒猫ジジが降り立った町で運行されているバスに表記されています。
当初キキは時計塔で一夜を明かしていた
当初のシナリオではコリコの町に来たキキが、最初の夜、時計塔で一晩夜を明かす予定でしたが。時間の尺上、カットされたようです。
トイレのシーンは恥じらいを描いている
宮崎監督は魔女の宅急便のテーマである「思春期」としてトイレのシーンを書いています。鈴木プロデューサーによるとトイレに入ったことを誰にも知られたくなくて思わず隠れたり、こそこそと行く思春期の恥じらいが描かれているようです。
ちなみに、ポスター案に、キキがトイレに入っているものがありました。
宮崎監督が描くヒロインはトイレも行かないといわれていたから、あえてトイレに座ってもの想うキキを描いたようです。
暇な店番シーンにも思春期を描いている
店番をしていたキキですが、あまりに退屈な為、ジジに向かってグチをこぼします。この時のキキの顔と手の変化だけでキキの気分を表しています。鈴木プロデューサーによるとこのシーンに関しても多感な時期である思春期を表現しているようです。
ウルスラの絵のモデル
ウルスラが描いている絵は八戸市立湊中学校養護学級の生徒さんたちが共同で制作した版画「虹の上をとぶ船」が元になっています。元の絵にはキキをモデルにしたという少女は描かれていないとのことです。
ウルスラは魔女だった!?
宮崎監督によると「あの絵描きのお姉さんも魔女だと思うんですよ。カラスをたぶらかして絵を描く。次にはキキもたぶらかして『あんたは美人だよ』とか、いろんなことを言ってね……そういうところを持っている人を出したかったんですよね」とのことです。
老婦人の孫「あたしこのパイきらいなのよね」
雨の中一生懸命に運んだキキに対して、老婦人の孫娘つっけんどんに「あたしこのパイきらいなのよね」と言います。
このシーンにショックをうけた方も多いと思いますが、実はこのしゃべり方を宮崎駿監督は気に入っているようです。
宮崎駿監督いわく「僕はあのパーティーの女の子が出てきた時のしゃべり方が気に入ってますけどね。あれは嘘をついていない、正直な言い方ですよ。本当にいやなんですよ、要らないっていうのに、またおばあちゃんが料理を送ってきて、みたいな。ああいうことは世間にはよくあることでしょ。それはあの場合、キキにとってはショッキングですごくダメージになることかもしれないけど、そうやって呑み下していかなければいけないことも、この世の中にはいっぱいあるわけですから」とのことです。
実はプレゼントをもらって終わりだった
宮崎監督は、キキが老婦人からのプレゼントに涙ぐむシーンでこの物語を終える予定でした。しかし、鈴木プロデューサーはお客さんへのサービスとして派手なシーンがほしいと注文を付けたそうです。そこで付け加えられたのが飛行船事故です。この事故に関してはメインのスタッフに反対にあったんだそうですが、鈴木Pは「何でもいいから付け足せばいいわけじゃない。宮さんが作るんだよ。面白くなるでしょ!」とスタッフを説得したようです。
宮崎駿監督が作中登場している
「あのデッキブラシはわしが貸したんだぞ!」と自慢げに話しているおじさんの後ろの方に眼鏡をかけた宮崎監督がいます。
作品のパンフレットでは「きっとご本人の知らないまに、アニメーターの人が、いたずらしたのかもしません」と紹介されています。
ジジについて
ジジは13歳で聞きと同い年です。(キキと一緒に育ちました。)
魔女の家では、女の子が生まれると、同じ時期に生まれたオスの黒猫を探し出して一緒に育てるという慣わしがあるようです。
ジジが喋らない理由
物語のラストでキキは再度飛ぶことができるようになりましたが、ジジは最後まで喋らないままです。この理由はキキの魔女の力が弱くなってしまったからではなく、キキが新たな一歩を踏み出したからこそ、ジジが「ただの猫」にもどっています。
このことについて鈴木敏夫プロデューサーは次のように語っています。
「(ジジは)ただのペットじゃなくて、もうひとりの自分なんですね。だからジジとの会話っていうのは、自分との対話なんです。ラストでジジとしゃべれなくなるというのは、分身がもういらなくなった、コリコの町でちゃんとやっていけるようになりました、という意味を持っているわけです」