「アーヤと魔女」が近日劇場公開します。
この記事では、「アーヤと魔女」の原作・アニメ版の違いとアニメ版では明かされる事がなった点・豆知識を紹介したいと思います。
目次
ハウルの動く城と同じ作者
出典:https://gogoniji.exblog.jp/22461948/
それではまず原作者について少し触れたいと思います。
「アーヤと魔女」は、ダイアナ・ウィン・ジョーンズによるファンタジー小説「EARWIG AND THE WITCH」であり、2011年3月に76歳で亡くなった彼女にとっての遺作となる作品でもあります。
そして、2004年に公開されたジブリ映画「ハウルの動く城」と同じ原作者であり、「ハウルの動く城」が公開された当時、「宮崎はわたしが執筆した時と同じ精神で映画を作った」と大絶賛のコメントを残すなどジブリファンであることを公言しています。
ただ、ダイアナさんは「アーヤと魔女」の続編を書き終わる前に亡くなったことで、散りばめられた伏線が回収されずに終わっています。
(続きがあったとしたら、読んでみたかったです。)
映画・NHK放送の違い
「アーヤと魔女」は2020年の年末にNHK総合テレビで放送されています。
ここでは、映画祭版・NHK版・劇場版の違いを紹介します。
・本編時間の違い
まず、第1に本編の時間が異なり下記の様な違いがあります。
僅かな差ですが、劇場版は気持ち長い感じでしょうか。
・追加編集されたカット
映画祭版・NHK版・劇場版共に基本的にはストーリー内容はほとんど一緒ですが、映画化される時に編集されたカットが新たに追加されています。
追加された箇所はプロデューサーの提案によりアーヤの心情に寄るシーンを追加・編集している様です。
大きく3パートあります。
・Aパート
アーヤが臭い部屋から出てきた後に玄関の扉がなくなっていることに気がつくシーンがあります。自分が閉じ込められたことに腹を立てるアーヤはベットの中で「EARWIG」と書かれたテープを見ています。
NHK版終了しますが、劇場版ではその後、閉じ込められたことに腹を立てて掛け布団を顎まで引き寄せて包まりながら寝ようとしますが、初めて1人で寝ることに心細くなるシーンが追加されています。
・Bパート
アーヤがマンドレークの部屋を覗き込んでデーモンが揚げたてのフィッシュアンドチップスを取ってこさせるところを見るシーンあがあります。
デーモン達に身の回りのことをやらせているマンドレークを羨ましいと思いながら、家事をこなしていたアーヤは、ふとチェストの中から電池を探し出してラジカセに入れます。
劇場版ではその後、自分は「前はマンドレークみたいに暮らしていたのかも。」と自分を顧みます。
そして、デーモンに指示するマンドレークの真似事をしつつ、今度はカスタードの真似をした後に「カスタードに会いたいな。」と呟きつつテープをラジカセに入れます。
・Cパート①
アーヤがベラ・ヤーガに「奴隷じゃないって言ってるでしょ!」と完全に切れてまくし立てるシーンがあります。
この後劇場版では、言いすぎたと急に怖くなって後ずさるアーヤをベラ・ヤーガは思い切り平手打ちします。(トーマスはびっくりする。)
・Cパート②
その後、怒鳴るベラ・ヤーガに渋々従うアーヤはベラ・ヤーガが自分に魔法を教える気がないことを知り、不機嫌な顔で作業部屋から出てきます。
劇場版ではこの後、台所へ向かって歩くシーンになり、天気が回復して作業部屋へは日差しが差し込んでくる描写になります。
台所へ歩くアーヤは湧き上がる冷たい怒りをこめて(ナウシカの様な感じで )むっつりと歩いている様です。
・クレジットがある
STAFF &CASTに各クレジットが掲載されている様です。
・その他劇場版の違い
また、最先端の映像や音声技術で作品への没入感を味わえる「ドルビーシネマ」でも上映されますので、テレビでは感じることができない迫力等を味わえるかと思います。
それでは、原作・アニメ版では明かされていない点・新たな設定・豆知識等を紹介したいと思います。
キャラクター紹介
「アーヤと魔女」のキャラクターデザインを手掛けたのは近藤勝也さんです。
宮崎吾朗監督とずっとコンビを組んでこられた方ですね。
・アーヤ
主人公「アーヤ」は赤ん坊の頃から孤児として育ち自身の出生を知りませんでした。
本当の名前は「アヤツル」
ちなみに「アーヤ」の本当の名前は「アヤツル」です。
これは、ブリッグズ園長が「アヤツル」が人を「操る」という意味みたいで「まともな名前ではない」と判断して出生届を出すときに「名前」アーヤ・苗字:ツール」で提出しています。
周囲の人を操って、自分の思いどおりにさせてしまう賢さと才能を持つアーヤらしい名前ですね。
・始めは3頭身だった
近藤勝也さんが最初、宮崎吾朗監督へ提案したアーヤのデザインは丸顔で3頭身くらいの姿だった様ですが、宮崎吾朗監督がしっくりこなかったようです。
「目と目の間はもうちょっと離して」、「少し頬を膨らませて」、「小鼻をもうちょっと抑えて」など意見を交えつつ微妙な調整を加えていった結果今のようなデザインになった様です。
・アーヤが読んでいた本
「子どもの家」の食堂でアーヤが読んでいた本のタイトルは「The Hound of the Baskerviles(バスカヴィル家の犬)」です
アーサー・コナン・ドイルによるシャーロック・ホームズシリーズの長編小説のひとつです。
ちなみに隣でカスタードが読んでいた本は、ロバート・A・ハインラインが書いた長編SF小説「THE RED PLANET(赤い惑星の少年)」です。(カスタードはSF小説が好きです。)
・アーヤの母親
・12人の魔女が登場しない理由
母親は12人の魔女になぜか追われていました。
原作でも母親がなぜ12人の魔女に追われていたのかは明かされていませんが以下のような手紙を同封して「アーヤ」を孤児院の前に置き去りにします。
原作では12人の魔女や母親は登場していませんが、劇場版でも登場しませんし、12人の魔女に母親が追われている理由は明かされることはありません。
このことに関して、宮崎吾朗監督は以下のようにコメントしています。
物語を作る上で色々試行錯誤した後に、結局は12人の魔女を登場させないことに落ち着いたようですね。
・母親がバイクに乗る理由
原作ではアーヤの母親は登場しません。
しかし、アニメ版・劇場版ではアーヤの母親が登場します。このことに関して、宮崎吾朗監督は以下のようにコメントしています。
確かに序盤にバイクに乗って颯爽と登場する魔女の姿は枠に囚われていない様に感じます。
バイクに乗る・バンドを組むといった原作にはない設定によって、アーヤのお母さんの破天荒さがより鮮明になりますね。
・ベラ・ヤーガ
・昔は綺麗な女優だった
ベラ・ヤーガのキャラクターデザイン設定として昔は綺麗な女優だったけれど、現在は何も艶もないおばさんになった姿をイメージしている様です。
・マンドレーク
・当初は別の人をイメージしていた
最初は原作者のダイアナ・ウィン・ジョーンズさんの旦那さんをイメージしてキャラクターのデザインをした様ですが、最終的に音楽を担当した武部聡志さんに落ち着いた様です。
・物書きからバンド構想になった
物書きであるマンドレークをそのまま原稿を書かせると動きがなくて面白くないと考えていた時に、監督補佐の郡司さんが『ピアノを弾いていたらいいのに』と言ったことで「実は3人は元々バンドを組んでいた」という発想につながった様です。
・「アーヤと魔女」の作者設定
「マンドレーク」の職業は小説家であり、作中で「マンドレーク」が読んでいる新聞に自身の作品が複数回登場します。
詳しくはこちら→「マンドレーク」が「アーヤと魔女」作者設定・アーヤの協力・作品変化を考察
最初に登場する「マンドレーク」の作品は酷く辛辣な事が書かれています。
そのタイトルが絵コンテから「EARWIG & WIZARI…」と書かれていいて、マンドレークが書いた本である事が判明しています。
そして、物語終盤でも「マンドレーク」は新聞を読んでいますが、今回そこに書かれている自身の作品は絶賛されています。
そのタイトルは「Earwig and the Witch」であり日本語版のタイトルは「アーヤと魔女」です。
・執筆した本のタイトル
作家であるマンドレークが執筆した書籍は以下の通りです。
・Princess and the Wizard :架空の新聞「The Kajino Daily」にて「駄作」と酷評され、さらにアーヤにも酷評される
・Earwig and the Witch:「The Kajino Daily」にて「傑作」と評される。
・マンドレークの怒り
「私を煩わせるな」が口癖なマンドレークは背後に燃えさかる炎を描くことで怒りを表現しています。
初期設定は一緒に逃げる
マンドレークが怒り狂うクライマックスシーンは、現在の形になる前に試行錯誤が繰り返されています。
初期の設定では、アーヤとベラ・ヤーガは一緒に怒り狂うマンドレークから逃げて螺旋階段を駆け上がったりしています。
ミミズを加えたデーモンがいる
怒り狂うマンドレークをアーヤがベットの下でやり過ごそうとするシーンで、マンドレークの後を追うように奥の壁からわらわらとデーモン達が現れるシーンがあります。
このシーンでどうやらアーヤが壁の向こうへ送ったミミズを加えたデーモンが混じっている様です。
アーヤは魔女なのか?
「アーヤの母親」で紹介した通り、アーヤの母親は12人の魔女のなかまであることがわかりました。
ということは「アーヤ」は魔女(?)ということになると思いますが、はっきりと魔女であるという描写はありませんでした。
ただし、宮崎吾朗監督のコメントに書かれている様に、アーヤの母親は魔女であることが確定しています。
そのため、アーヤも魔女ということでいいかもしれませんね。
(園長先生はアーヤが魔女であることに懐疑的でしたが)
アーヤにマンドレークの角が見えた理由
「聖モーウォード子どもの家」にベラ・ヤーガとマンドレークが訪れた際、他の子供たちにはマンドレークに角があることが見えていないのにアーヤは見ることができました。
マンドレークに角がある理由をアーヤがベラ・ヤーガに聞いていますが、答えてもらえなかったですし、アーヤだけに角が見える理由も原作では触れられていません。
(ちなみに原作ではいらいらして怒った時だけ角が生える様ですが、子の理由も明かされていません。)
アーヤの母親が魔女であることは確定しているので、おそらくは魔女の力によるものかと思います。
ベラ・ヤーガとマンドレークの関係性
ベラ・ヤーガはマンドレークをとても恐れており、一昔前の封建的な家父長制の中で苦しめられています。
そして、苦しめられていることで、下の者(アーヤ)に八つ当たりしています。
・従属する女性を表現
マンドレークによるパワパラに不満を抱えつつ従っている姿は、一昔前の夫婦像にありそうな関係性です。
ベラ・ヤーガは魔法を使用できますし、機会を見てマンドレークに反発もできそうですが、そうすることなく、従属することで自分を安定化させている女性像を表現しているのですね。
このことに関して宮崎吾朗監督は以下のようにコメントしています。
このように歪な夫婦が作中の登場する場合は、ベラ・ヤーガかマンドレークのいずれかが(あるいは両方が)ひどい目に遭うものですが、「アーヤと魔女」はそういったことをせず、アーヤをきっかけとして関係性が改善していく展開がいいですね。
母親とベラ・ヤーガ・マンドレークは知合いだった
アーヤを引き取った「ベラ・ヤーガ」・「マンドレーク」と「アーヤの母親」が、実は同じロックバンド「EARWIG」のメンバーであったことが明かされます。
この、アーヤの母親たちがロックバンド活動していたという設定は原作にはありません。
この設定に関して宮崎吾朗監督は以下のように述べています。
「アーヤと魔女」の時代設定を1990年代にして、そこからその時代の流行りなどを考え抜いた結果、ロックバンドという設定になったのですね。
・アーヤを知っていたのか?
ベラ・ヤーガ・マンドレークはアーヤを自分たちのバンドメンバーだったボーカルの子供であることを知っていたのでしょうか。
おそらく知らなかったであろうと思う点を2点紹介します。
・初対面の会話
ベラ・ヤーガ・マンドレークがアーヤを初めて対面する時、バンドボーカルの娘であることを知っていて引き取ったという描写はなく、むしろ下の会話からおそらく知らなかったと感じます。
・ラジカセの音楽に驚く
怒り狂うマンドレークがアーヤとベラ・ヤーガをチェストの方へ追い詰めている時、二人の背中がチェストにぶつかったことをきっかけに、ラジカセから「don’t disturb me」が流れ始めます。
この音楽にベラ・ヤーガとマンドレークは驚き、「なんで、わたしたちの曲が!?」とベラ・ヤーガが発言しています。
これらのことから、2人は完全に知らなかったものと思います。
・舞台はイギリス
「アーヤと魔女」の舞台はイギリスです。
・魅力的なイギリス料理
このため、ローストビーフ・コーニッシュパイ・プラウマンズランチなどイギリスの代表的な料理が登場します。
・聖モーウォード子どもの家
イギリスの片田舎にある古い街並みの中にあり、かつては修道院や教会だったという設定があります。
建物のデザイン
建物のデザインは佐竹美保さんによって書かれた日本語版原作の挿絵を参考にしています。
ちなみに赤ん坊のアーヤは、母親に子どもの家の玄関に置き去りにされますが、劇場版等だと毛布にくるまっていましたが、アーヤを籠に入れて置き去りにしました。
・食堂の絵
食堂の壁面にある大きなコルクボードに貼られた子ども達の絵は、その1枚1枚、スタッフや子ども達によって本当に描かれた絵が張り込まれています。
・魔女の家
アーヤがベラ・ヤーガとマンドレークに連れられた家は、ライム通りの13番地に建てられていました。
アーヤはその家の門扉のところで立ち止まり「13」を睨みつけて「13番地。ふん、やっぱりね。」と言います。
ここでアーヤが13の数字を見て「やっぱりね」と言った理由は縁起が悪いと言われる13という数字はベラ・ヤーガとマンドレークにぴったりな数字だと思ったからです。
最後に(アーヤと魔女の上映楽しみです!)
最後に、アーヤと魔女が映画化される際に新たなカットが追加されます。
このため、原作・アニメ版・劇場版の違いを楽しむことができます。
また、NHKで放送されたアーヤと魔女の見逃し配信等は現在ありませんので、アニメ放送を見逃してしまった方は是非劇場へ足を運んでみてはいかがでしょうか。
映画公開が楽しみです!
・参考書籍
・スタジオジブリ全作品集
・The Art of Earwig and the Witch
・アーヤと魔女 絵コンテ集