2013年に公開された「風立ちぬ』」を最後に長編映画からの引退を宣言した宮崎駿監督が2017年に引退を撤回し、短編アニメ「毛虫のボロ」の完成を経て、現在は長編アニメ「君たちはどう生きるか」の作成中です。
長編タイトル自体は2017年10月28日、早稲田大学で行われた漱石山房記念館開館記念イベントにおいて宮崎駿監督から語られています。
引退を撤回してまで望む大変注目されている宮崎駿監督の新作長編映画ですが、どのような内容でいつ頃上映になるのでしょうか。
今回は、おおよその予測を交えて紹介してみたいと思います。
目次
公開時期は2022年頃か?
鈴木敏夫プロデューサーと女優の夏木マリさんが2019年4月19日、神田明神ホールで行われた「鈴木敏夫とジブリ展」プレス内覧会に出席しました。
夏木さんが演じた『千と千尋の神隠し』の湯婆婆・銭婆にまつわる裏話や、宮崎駿監督の新作『君たちはどう生きるか』の状況ついて言及されました。
この中で、夏木さんが「新しい映画はどうなんですか?」と尋ねると、「あのとき、僕は終始嬉しそうな顔だったと思うんですよ。これでもうなにもやらなくていいと思って……」と2013年の引退会見をとふり返りつつ、
「今『君たちはどう生きるか』……ちょっと口をすべらせちゃうと3年かけて絵コンテが、今まさに完成しようとしています」
と報告しました。
夏木さんが「絵コンテが完成すると、どのぐらいでわたしたちは観られるのですか?」と問うと、「まだわからないのですが、3年後……?」と答えました。
2019年時点での3年後となると2022年ですので、予定ではジブリパークが開園と同時期に上映されることになりそう(?)ですね。
原作タイトルは吉野源三郎の小説から!
大ベストセラーの真髄を池上彰さんが解説します(写真:毎日放送提供)
宮崎駿監督最新作の「君たちはどう生きるか」は1937年に出版された児童文学者・吉野源三郎の小説から由来しています。
初版からすでに80年以上の歳月が経った現在もなおロングセラーを続ける古典的名作であり、2003年には「私が好きな岩波文庫100」で5位にランクされた名著であり、100万部突破のベストセラー作品です。
池上彰さんは「君たちはどう生きるか」に関して以下のように語っています。
・漫画版も大ヒット
この「君たちはどう生きるか」は2017年8月、羽賀翔一さんにより漫画化されて話題になりました。
この漫画版「君たちはどう生きるか」は日本テレビの『世界一受けたい授業』で齋藤孝が紹介したことなどで一気に大ヒットした作品ですし、書店に行く方は一度は見たことがあるのではないでしょうか。
ジブリ映画ではどのような内容になるか?
後述しますが、「君たちはどう生きるか」をざっくり言うと、中学2年生の主人公コペル君が精神的に成長の物語です。
宮崎監督は半藤一利さんとの対談の中で
「その本(君たちはどう生きるか)が主人公にとって大きな意味を持つ話になる」
「どんなに残酷で困難な時代でも、人間らしく生きなければならないというメッセージが伝わってくる」
と語っていますので、この小説を基にした作品であることは間違いなさそうです。
しかし、鈴木敏夫プロデューサーによると
「内容は、タイトルとは随分と印象が違う大ファンタジーだ。宮さんの面目躍如は、やはり“冒険活劇ファンタジー”だった」
どうやら、「君たちはどう生きるか」の主題である「人生とはなにか」「生きるということとはどういうことか」という大きなテーマをそのままに宮崎駿風にファンタジーにアレンジした作品になりそうです。
次にざっくりとしたあらすじを紹介します。ネタバレもありますので気をつけて下さい。
原作のあらすじ
主人公は「コペル君」こと本田潤一君です。
お父さんを3年前に亡くした中学2年生であるコペル君が、学校生活などで直面する人間関係などの問題を通して、生き方を考えて成長して行く物語です。
1.ものの見方について
天動説が地動説になったように、自分中心的なものの考え方から、広い世間の中に自分がいるのだと見方を変えます。
地動説を唱えたコペルニクスから、同様に「人間は世の中という大きな流れを作っている一部」にすぎないことを発見した潤一君のことをおじさんは「コペル君」と呼ぶことにしました。
勇気ある・(立派な)行動とは?
自分のクラスでいじめがあることに気がついたらどのように行動しますか?
クラス内にいじめがあることに気が付く「コペル君」は見て見ぬ振りをしてしまう。
どうすればいいか悩んでいる「コペル君」に対しておじさんが教えることは
「自分で考えるんだ。」
他人から教えられた立派な言動や行動をとっても、それは「立派そうに見える人」になるだけで、立派な人ではないと語るおじさん。
「誰がなんといったってー」いいことをいいこととして、悪いことを悪いことだと一つ一つ判断できるようになるためにも、どうするべきか考えることが重要なんですね。
人間の結びつきについて
目の前にあるものは、当たり前にそこにあると思っていたが、実は全く当たり前でなないのかもしれない。
・コペル君は、手に取った粉ミルクがオーストラリアの牛から自分の口に入るまでの工程を考えて、自分の手に届くまでに何万人だかしれないたくさんの人とのつながりがあることに気がつく。
・それは「生産関係」としてすでに知られていることを説明するおじさんはさらに、偉大な発見がしたかったら、何よりもまず勉強して学問の頂上にのぼり切る必要があることを語る。
それは、学問もまた一人一人の経験をまとめ上げたものだから。
そして、人間らしい関係とはどういう関係なのかと問う。
人間が人間同士、お互いに好意を尽くし、それを喜びとして結びつくために、あなたに出来ることは何ですか?
貧困とは?
学校へ行かないで弟たちの子守をしつつ家業を助ける浦川君。
ノートを何冊も買うことができず、叔父はお金の工面をするために山形までいっている浦川君は果たして貧乏なのだろうか。
自分が消費するよりもより多くのものを生産している人と、何も生産しないでただ消費するばかりの人ではどっちが立派な人間かを問うおじさん。
そして、「コペル君」のことを何も生み出しておらず消費専門家だと言うおじさんはある質問を投げかける。
「君は確かに消費ばかりしていて何も生産していない。しかし、自分では気がつかないうちに、ある大きなものを日々生産しているのだ。それは一体なんだろう。」
この質問に対する答えは記載されていませんが、一体なんだと思いますか?
偉大な人とは?
ナポレオンは、わずか10年の内に貧乏将校から皇帝の地位に一気に駆け上り、戦争となれば、どこいっても勝利を勝ち取ったまさに天才であった。
35歳でヨーロッパ全土の皇帝となったナポレオンであったが、その後10年で皇帝から捕虜の身に転落する。
貧乏将校から一度はヨーロッパ全体を支配する皇帝になり、その後失脚するまでの20年は確かに素晴らしく偉大な活動力に感嘆すると言うおじさんだが、同時に、
「ナポレオンはその素晴らしい活動力で、いったい何をなしとげたのか。」
と「コペル君」に投げかける。
英雄・偉人と言われる人の中で本当に尊敬できる人というのは、人類の進歩に役立った人だけだと教えると同時に、人類の進歩に結びつかない英雄的精神の空しいが、英雄的な気魄を書いた善良さも同じように空しいことが多いと語ります。
友に対する裏切り!
コペル君は、「ガッチン」がいじめられたとき助けるという約束を破り仲間を見捨ててしまいます。
「ガッチン」がいじめられた時に壁となると言ったのに、実際は目の前でいじめられている姿を見ても助けに行かなかった罪悪感・そして裏切ってしまった仲間に対してどう接したらいいかわからず、学校を休む「コペル君」。
自分の過ちを恥じる「コペル君」に対しておじさんは、
人間である限り過ちは誰にでもあり、過ちを犯したという認識は苦しいものだと、しかし過ちを男らしく認めてしまい、そのために苦しみ、何が正かを考え行動することの重要性を語ります。
同じように仲間を裏切ってしまった時あなたならどうしますか?
君たちはどう生きるか?
コペル君は、いままでの事件や、おじさんからの教えによってこれらの事件と、叔父さんの教えによって、
「誰かのためにっていう小さな意思がひとつひとつつながって、僕たちの生きる世界は動いている。」
ことに気がつきます。
自分中心の考え方から、世の中の誰かのために自分の考え方を変えた「コペル君」
君たちはどう生きるか?
最後に!
宮崎駿監督の「引退宣言」からの「撤回」という流れはいつものことですが、宮崎駿監督ももう79歳ですので、おそらく「君たちはどう生きるか」が最後の作品になるかもしれません。
ファンタジーものに仕上がった渾身の最新作の進捗は遅れ気味のようですが、最後までこだわり抜いた作品を早く見たいですね!